歯周病の治療・予防
このような症状ありませんか?
- 歯茎が赤く腫れている
- 歯磨きやフロスで歯茎から出血する
- 歯が長くなっている気がする
- 朝起きたら口の中がネバネバする
- 口臭が気になる
- 歯と歯の間に物が詰まりやすい
- 歯茎から膿が出る
- 歯がグラグラする
→歯周病が原因かもしれません。
|歯周病とは
歯と歯茎の間にある溝(歯周ポケット)から侵入した歯垢(細菌の塊)がたまり、歯肉に炎症をおこした状態、それに加え歯を支える骨にまで炎症が広がり骨を溶かしてしまう状態のことを言います。
口の中には400~700種類の細菌が生息しており、その細菌は普段は悪影響を及ぼしませんが、ブラッシング不足や糖類の過剰摂取により歯の表面に付着し、歯垢を形成します。歯垢1㎎中には10億以上の細菌がいると言われており、その歯垢が唾液により石灰化したものを歯石といいます。
2週間程度で歯垢が歯石に変化すると言われています。歯石はブラッシングでは除去できないため歯科医院での定期的な清掃が必要です。
日本人の歯を失う原因の1位は歯周病で35%以上を占めています。30歳代以上の80%以上が歯周病に罹患しているといわれています。症状がなかったり、目に見えないうちに進行していくことが多いため、病状が悪化してから歯科医院に来院されることが多いため、歯を守るためにも早期からの治療および予防が必要です。
歯冠と歯根の境目(セメントエナメル境)からポケットの1番深い部分までの距離のことをクリニカルアタッチメントレベル(CAL)といいます。また、歯茎の頂点からポケットの1番深い部分までの距離を歯周ポケットといい、健康な歯肉では歯周ポケットは1〜2㎜程度とされています。
2019年の日本における歯周病の新分類では、歯周ポケット主体の基準からもともとCALを基準にしていたAAP(アメリカ歯周病学会)、EFP(ヨーロッパ歯周連盟)の歯周病の分類(2018年)との差異がなくなりました。
歯肉炎、軽度歯周炎(StageⅠ、Ⅱ)
歯周ポケットが5㎜以下
クリニカルアタッチメントレベルが4㎜以下
今までに歯周炎により歯の喪失がない
骨の吸収が歯根の長さの3分の1未満
中等度歯周炎(StageⅢ)
歯周ポケットが6㎜以上
クリニカルアタッチメントレベルが5㎜以上
今までに歯周炎による歯の喪失が4本以下
骨の吸収が歯根の長さの3分の1を超える
重度歯周炎(StageⅣ)
歯周ポケットが6㎜以上
クリニカルアタッチメントレベルが5㎜以上
今までに歯周炎による歯の喪失が5本以上
骨の吸収が歯根の長さの3分の1を超える
歯の動揺が激しい、かみ合わせが崩壊している
|歯周炎のグレード(進行度)
グレードA(遅い進行)
クリニカルアタッチメントレベル5年変化なし
バイオフィルム蓄積はあるが、組織は破壊なし
非喫煙者、糖尿病
グレードB(中等度の進行)
クリニカルアタッチメントレベル5年で2㎜未満
バイオフィルム蓄積にみあった組織破壊あり
喫煙者1日10本未満、糖尿病HbA1c7%未満
グレードC(急速な進行)
クリニカルアタッチメントレベル5年で2㎜以上
バイオフィルム蓄積以上の組織破壊あり
喫煙者1日10本以上、糖尿病HbA1c7%以上
|歯周病の検査および治療法
・歯周ポケット検査
歯と歯茎の間にある溝(歯周ポケット)の距離を測定することにより歯周病の重症度を評価します。また、歯周ポケット測定時に歯茎から血が出ているか、歯の揺れはどの程度あるかも評価します。
・エックス線検査
歯槽骨の吸収の程度を調べるのに必要で、歯茎の下にかくれている歯槽骨がどれだけとけているかを評価します。
エックス線検査の被ばく量ですが、日常生活で自然に浴びる自然放射線の100分の1程度とされているため妊婦の方が受けてもほとんど問題ありません。
・TBI(歯磨き指導)
スクラビング法やバス法といった正しい歯磨きの仕方を衛生士より指導させていただきます。プラークを落としてさえいれば歯磨きは1日に1~2回程度で問題ありません。フロスや歯間ブラシについても正しい使い方を指導させていただきます。
・スケーリング
歯面に付着しているプラーク、歯石、その他の沈着物を機械的に除去することで、普段の歯磨きでは落としきれない汚れを落とす治療です。スケーリング中にしみるなどの痛みが出たり、歯茎から血が出ることがありますが、通常の場合は、麻酔をするほどではありませんので、どうしても痛みが強い場合は衛生士にお伝えください。
また、スケーリング後は表面をおおっていた歯石が除去され、冷たいものがしみるなど知覚過敏の症状がでることがありますのでしばらくの間、冷たいもの熱いものを避けて、知覚過敏専用の歯磨き粉を使用するのが良いかもしれません。
・SRP
(スケーリングルートプレーニング)
歯根面に付着した歯肉縁下歯石および粗造で根表面の病的セメント質を除去し、根面を滑沢化することでスケーリングより深い部分の歯石を除去します。
術後はスケーリング同様歯茎からの出血や痛み、知覚過敏の症状が出ることもあります。また、歯周病の改善に伴い歯が長くなっているように見えることもあります。
・歯周外科(フラップ手術)
スケーリングやルートプレーニングで回復が困難な歯周病については麻酔をかけた状態で歯茎の切開を行い、目視した状態で歯石を取り除いていきます。
炎症により破壊されて歯槽骨を整えたりすることもあります。歯茎を元の状態に戻して縫合し、出血が多い場合は特殊なパックで歯茎を保護することがあります。
抜糸は10日後以降に行い、2週間ほどは治療したところの歯磨きは控えていただき、うがいのみになります。
術後は検査を行い問題なければメインテナンスへ移行します。
|歯周病のメインテナンス
Beckerらの研究によると、歯周病治療を行わなかった人は5年間に1.8本、歯周治療をうけたが、メインテナンスをおこなわなかった人は5年間に1.1本、歯周治療もメインテンスも両方受けた人は5年間に0.5本の歯を失ったというデータがあります。
メインテナンスの間隔は歯周病の重症度により異なりますが、1〜3ヶ月毎に必要なことが多いです。メインテナンスは歯のトラブルがなくても、歯を残していく上で非常に大切なことですので、当院での定期的なメインテナンスを受けていただくことをお勧めします。